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偉大な英国、強大な米国?  ― 英米の選挙に思う一国至上主義の復活と環境問題 [地球環境・環境倫理]

本日は参議院議員選挙投票日。

日本の選挙だけではなく、英米でも首相、大統領の選挙が話題となっている。

英国では、EU離脱問題に端を発した国民投票により、思いがけず離脱派が過半数を制してしまった。
国民投票のやり直し(再投票)を求める議会HPの署名も400万件を超えているというが、それこそ後の祭りだ。

首相退陣を決めたキャメロン首相の後継となる保守党党首選挙は、二人の女性候補の決戦となり、故サッチャー首相以来の約26年ぶりの女性首相誕生となることが確実という。

EU離脱派の理由にはいろいろとあるようだが、その根底には古き良き「大英帝国」よ、もう一度という思いがあったのは間違いないだろう。

その大英帝国時代の象徴として「大英博物館」がある。世界各地からの美術品や考古学資料など、約800万点が所蔵され、常設展示だけでも約15万点という。
これらの収蔵品は個人や収集家からの寄贈によるが、大英帝国時代に植民地などから略奪されたものが多く含まれているのも周知の事実だ。

世界各地からの略奪収集といえば、大英博物館だけではなく、「王立キュー植物園(キュー・ガーデン)」も同様だ。

プラントハンターによって世界各地で採取された植物・生物資源は、各地の植物園を中継し、そこで順化されて、再び植民地のプランテーションなどで生産され、大英帝国の繁栄に一役買った。

その中には、大英帝国の植民地だけではなく、アマゾン流域原産のゴムのように、他国の植民地(アマゾン流域はポルトガルの植民地)からの密輸もあった。

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英国によりアマゾンから密輸されて東南アジアに広まったゴム園(インドネシアにて)

キュー植物園は、こうした大英帝国が世界各地に張り巡らした植物園ネットワークの中心だった。キュー植物園内には、現在でも大英帝国ビクトリア朝時代に建設された「パーム・ハウス」という温室などが残されている。植物園全体は、2003年に世界遺産に登録されている。

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ビクトリア朝時代の大温室パーム・ハウス(キュー植物園にて)

生物多様性条約では、こうした原産国の権利を無視した生物資源(遺伝資源)利用に対して、資源利用から生じた利益の還元などを目的の一つとしている。

2010年に名古屋で開催された「生物多様性条約COP10」では、遺伝資源へのアクセス(利用)と利益還元の方策を示した「名古屋議定書」が採択された。(詳細は本ブログ記事、「名古屋議定書採択で閉幕 COPの成果 -COP10の背景と課題(3)」参照)

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名古屋議定書も採択されたCOP10(名古屋国際会議場にて)

先進国といわれる国々は、かつての大英帝国のような振る舞いは許されない。


一方、米国大統領選でも、トランプ旋風が吹き荒れている。
トランプ候補の主張も、尽きるところ強いアメリカの復活だ。

かつて、地球環境に関する条約でも、ブッシュ親子の大統領時代に一国至上主義によって、条約の実施が危ぶまれる事態となったことがあった。

父親のブッシュ大統領は産業経済界の意向を受けて、1992年に成立した「生物多様性条約」への署名を見送り、米国はいまだに条約に加盟していない。(詳細は本ブログ記事、「地球環境と一国至上主義(その2)  生物多様性条約と名古屋議定書をめぐって」参照)

息子のブッシュ大統領も大統領就任後わずか2か月で、地球温暖化防止のための「京都議定書」(1997年)から離脱表明した。(詳細は本ブログ記事、「地球環境と一国至上主義 (その1)  気候変動枠組条約と京都議定書をめぐって」参照)


自国を良くしたいと思うのは、誰でも同じだし、大事なことだ。
しかし、グローバル化した現代、自国だけに目を向けて満足するわけにはいかない。

地球環境問題はなおさらだ。

自分は犠牲を払わずに、その恩恵だけを得ようという人々、国々をフリー・ライダー(タダ乗り)という。

類似の用語に、NIMBYもある。こちらは、ごみ焼却施設などのように生活には不可欠だが、それが自分の近くに設置されるのには反対する態度を表している。英語の"Not in my back yard"(自分の裏庭は嫌だ)の略だ。

どちらも、利己主義であり、国レベルとなれば一国至上主義となる。

英国、米国の選挙も、そして日本の選挙も、争点は別のところにあるが、一国至上主義には陥らないように願いたい。

もっとも、自国の拡大・強大化を顕示して一国至上主義化しているのは、当面は選挙のない隣国・周辺国も同じだけれどもね。


【本ブログ内関連記事リンク】

アジサイとシーボルト  そしてプラントハンターと植物園

ABS論争も先送り 対立と妥協の生物多様性条約成立 -COP10の背景と課題(2)

名古屋議定書採択で閉幕 COPの成果 -COP10の背景と課題(3)

生物資源をめぐる国際攻防 -コロンブスからバイテクまで

地球環境と一国至上主義 (その1)  気候変動枠組条約と京都議定書をめぐって

地球環境と一国至上主義(その2)  生物多様性条約と名古屋議定書をめぐって

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地球温暖化「パリ協定」 なぜ今?に迫る -その1 条約採択と京都議定書

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選挙と生物多様性





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mimimomo

こんばんは^^
今の時代は大揺れに揺れている感じですね。
危険もいっぱい! どうなっていくのでしょう。
何だか利己的な国が増えていくような・・・
by mimimomo (2016-07-11 18:59) 

staka

mimimomoさん
そうですね。誰しも、自分のこと、自分の国は大事ですが、それが強すぎるとかえってマイナスのこともありますよね〜
by staka (2016-07-11 19:54) 

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