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地球温暖化「パリ協定」 なぜ今?に迫る -その2 なぜ歴史的合意か [地球環境・環境倫理]

前回記事では、気候変動枠組条約と京都議定書をめぐる先進国と途上国の対立、そして米国の離脱を解説した。

今回は、京都議定書以降の交渉過程と「パリ協定」合意がなぜ“歴史的”と言われるのかに迫ってみる。

京都議定書は、当時の温室効果ガス国別排出量第1位の米国が議定書から離脱(2001年)し、また同第2位の中国、同第5位のインドは途上国として削減義務がないことなどから、その発効(2005年)当初から効果には疑問符が付かざるを得なかった。

削減義務を負う日本などもこれ以上の削減は無理であることから、資金援助や技術協力などによって他国の削減を実現すれば、その減少した排出量を自国の削減分としてカウントできる「京都メカニズム」が用意されていた。すなわち、共同実施(JI)、クリーン開発メカニズム(CDM)、排出権取引(ET)の3種で、さらに森林保全や植林による吸収源も削減実績にカウントされる制度となっていた。

これは、削減義務のない途上国の“実質的な”排出量を削減し、同時に日本など先進国の“形式的な、あるいは見かけ上の”削減目標を実現するという、両立の効果があった。

それでも日本などでは、実際の温室効果ガス排出量は増加する一方だった。

京都議定書に基づく削減の義務が生じる期間(第1約束期間)は2008年から2012年までの間であり、約束期間開始前から早くも京都議定書後(ポスト京都議定書)の削減の枠組み作りが模索された。

その後毎年開催されるCOPで議論が重ねられたが、たとえば2007年COP13(インドネシア・バリ島)では、「『2009年開催のCOP15までに合意する』ことが合意」(バリ・ロードマップ)されただけだ。

しかし、バリ・ロードマップで合意の期限とされた2009年COP15(デンマーク・コペンハーゲン)でも、新たな枠組みは合意されなかった。

2011年COP17(南アフリカ・ダーバン)では、「京都議定書」が2013年以降も継続されることになった。これには、削減義務を負わない途上国は賛成したが、そもそも参加していない米国はもとより、京都議定書のいわば生みの親でもある日本(それにカナダ)も不参加を表明した。

すべての排出国が参加する新たな枠組みの合意に失敗したCOPは再び、2013年のCOP19(ポーランド・ワルシャワ)で「次期枠組み(ポスト京都議定書)を2015年COP21で採択する」ことを合意した。

こうして先送りにされてきたポスト京都議定書が、2015年12月のCOP21(フランス・パリ)で「パリ協定」として合意された。

ここまでの経過説明がずいぶん長くなったが、それだけ途上国と先進国の対立(南北対立)が激しかったということだ。すなわち、途上国にとっては、温暖化は、産業革命以降の先進国の発展に伴うもので、その責任は先進・工業国が負うべきものとの強い認識がある。

この途上国の認識と南北対立の構図は、本ブログ記事でたびたび取り上げた「生物多様性」や「保護地域」をめぐる国際関係でも同様だ(下記の関連記事参照)。

その対立が解かれたのは、このまま温暖化が進むと、世界中で異常気象などによる国土の水没や食料減産、生態系消失といった危機が迫り、何らかの対策を講じないと人類の生存自体も危うくなると認識されたからだ。それだけ、切羽詰まった状況になっていることを世界中が認めざるを得ない現状ということだ。

国土水没の危機を抱える南太平洋諸国などの強い意向もあり、パリ協定では、世界の気温上昇を産業革命前から2度未満に、できれば1.5度以内となるよう努力することが合意された。人類活動による温室効果ガス排出量と森林などの吸収量とが均衡すること、すなわち排出を実質ゼロにすること、が今世紀後半までの長期目標となった。

そして、この目標達成のため、現在の温室効果ガス国別排出量第1位の中国、同第3位のインドなどのこれまで削減義務を負ってこなかった途上国、さらには京都議定書から離脱した同第2位の米国も含む“全ての排出国が参加”して、削減目標を作成・報告し、5年ごとに見直すことなどが義務化された。

拘束力のない自主的な削減目標の作成に留まるのか、義務を伴う削減目標制度とするのか、をめぐって長年の間、先進国と途上国間のみならず、先進国間でも対立があった。

しかし、これまで削減義務を負ってこなかった途上国も含めて“全ての国”が削減目標を立てて実行することが義務化されたことは、各国の自主的な削減量は別として、これまでなかった歴史的な点だ。

一方で、温暖化は先進国の責任とするインドなどの途上国の根強い主張を受けて、先進国による途上国の温暖化対策など資金への拠出も義務づけた。

こうして、実に18年ぶりとなる歴史的な枠組みが、196か国・地域の合意を得て誕生した。

地球温暖化の脅威が叫ばれていても、自国の産業・経済などを優先して、身近に迫らないと一致団結した対策にも合意できない。わかっちゃいるけど、止められない・・・ではない、まとまらない。

前回の京都議定書では、合意直後に米国が途上国との不公平を理由に離脱するなど、その実効性に赤信号がともったが、今回はその轍は踏まないでほしい。

世界各地での紛争やテロ、国内の安保法制制定、さらにTPPなど、地球温暖化だけでなく、この先の不安を懸念せざるを得ない今年だったが、「パリ協定」が合意されたことがせめてもの救いだ。

来年は、もっと明るい世界になって欲しいものだ。

今年も拙いブログにご訪問いただき、ありがとうございました。

皆様、良いお年をお迎えください。


【本ブログ内関連記事】

地球温暖化「パリ協定」 なぜ今?に迫る -その1 条約採択と京都議定書

見返りを求める援助 求めない援助

地球温暖化と生物多様性

ABS論争も先送り 対立と妥協の生物多様性条約成立 -COP10の背景と課題(2)

名古屋議定書採択で閉幕 COPの成果 -COP10の背景と課題(3)

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コメント 6

mimimomo

こんばんは^^
今回のパリ協定がしっかり守られることを祈ります。
人間は誰でもわが身が可愛いから、嫌なことは他人に押し付ける・・・ま、これが国同士でも結局同じなんでしょうね。
先日、星野道夫さんの「旅する木」と言う本を読んでいてアラスカに住むインディアンが野草(漢方薬)の存在を白人には絶対に教えないという行を読んで、何故だかstakaさんのブログを思い出しました。
by mimimomo (2015-12-27 17:38) 

トックリヤシ

stakaさんも良い年をお迎えください。。。
by トックリヤシ (2015-12-27 18:19) 

staka

mimimomoさん
星野道夫さんの本から私を思い出していただき、光栄、感激の至りです。
昨年訪れたブータンのように、人の幸せが自分の幸せと思う世の中になるとよいと思います。まずは自分から変身しなくては・・・・
by staka (2015-12-27 22:26) 

staka

トックリヤシさん
いつも南国の海を楽しませていただき、ありがとございます。
良いお年をお迎えください。
by staka (2015-12-27 22:28) 

yamagara22

良いお年をお迎えください。
by yamagara22 (2015-12-31 15:23) 

staka

yamagara22さんも、良いお年をお迎えください。
by staka (2015-12-31 16:00) 

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