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そのおいしいコーヒーはどこから? -スマトラ島の国立公園調査 [保護地域 -国立公園・世界遺産]

 今日のブログの話題は、「おいしいコーヒー」だ。といっても、コーヒーの入れ方や飲み方、あるいはコーヒー豆のうんちくを披露するものではない。

 たびたびブログで紹介しているとおり、私は地球温暖化の防止のための森林の減少や劣化による温室効果ガス(二酸化炭素など)の排出を抑止(REDD:Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries)するための調査プロジェクトに参加している。調査フィールドとなるインドネシアには、昨年1年間でも3回訪問した。地球温暖化防止のためには、単に森林の伐採や劣化を止めればよいというものでもない。やはり森林に生息・生育する生物の多様性保全や森林資源に依存して生活している地域住民のことも考慮に入れなければならない。REDD+では、これら生物多様性保全や地域住民の知恵や権利の尊重を「セーフガード」としてプロジェクト推進の際の配慮事項としている。私は、こうした観点から、インドネシアの国立公園管理(ガバナンス)について調査研究を進めている。

 調査地の一つ、ワイ・カンバス(Way Kambas)国立公園調査については、昨年末のブログでも紹介した(ブログ記事「今年最後のインドネシア調査」)。今回は、もう一つの調査フィールド、南ブキット・バリサン(Bukit Barisan Selatan)国立公園だ。

 s-BBSコーヒー伐採00238.jpgスマトラ島の西部(インド洋側)は、ユーラシア・プレートとインド・オーストラリア・プレートがせめぎ合う地域だ。東日本大震災以上の犠牲者が出た2004年12月のスマトラ島沖大地震とインド洋大津波も、このプレート活動によって生じたものだ。このプレート活動による隆起によって、スマトラ島のインド洋側には南北に山脈が連なっている。そこはまた、貴重な野生生物の宝庫でもあり、世界遺産にも登録されている。その山脈の最南端部が、今日の舞台、南ブキット・バリサン国立公園だ。

 しかし、その貴重な生物多様性を有する国立公園も、住民侵入(エンクローチメント)によって違法伐採が進んでいる。これらの違法侵入住民の多くは、ジャワ島など地元外からの移住者だ。この侵入者たちにより、原生林が伐採されて、コーヒーのプランテーション(農園)となっている。かつての原生林の面影を残す太い切り株もある見渡す限りの伐採跡には、細々としたコーヒーの苗が植えられている。コーヒーは熱帯地域の植物ではあるが、強い直射日光では葉焼けなど生じるため、通常は半日陰で栽培されている。しかし、樹木を選択して伐採するのは手間がかかるし、シェード(緑陰樹)の植栽や後片付けも大変だ。そこで手っ取り早い方法として、皆伐して焼き払い、そこに苗を植えることになる。

 s-ロブスタコーヒー01391.jpgこうして造成されたコーヒープランテーションでは、コーヒー栽培にとっては劣悪な環境で粗放な管理のため、収量も低く、品質も落ちる。しかし、ここで栽培されているロブスタ(Robusta)種は、日射や病害虫にも強く、比較的栽培が容易でもある。違法でもあり、品質も劣ることから、当然価格も安く買いたたかれる。それでも、違法侵入の住民にとっては、貴重な現金収入だ。

 このロブスタ種は、日本で一般的に馴染みのあるアラビカ種に比べると、苦みや渋みが強く、かつ廉価でもあり、インスタントコーヒーやレギュラーコーヒーの増量にも使われているという。大手コーヒーチェーンでも使用されているともうわさされているが、その真偽は確かめていない。研究によると、南ブキット・バリサン国立公園での違法伐採の面積増加も、世界的なコーヒー価格に左右されているという。

 国立公園管理当局は、違法住民を追放するため、期限内退去の警告文を公園入り口に掲示し、警察や軍隊も動員してパトロールをしているが、一向にその効果はあがっていない。

 結局のところ、これまでのブログ記事でも紹介してきたエビやバーベキュー炭、あるいはスナック菓子の揚げ油やバイオ燃料に使用されるパームオイル(ヤシ油)などと同じように、私たちが飲むおいしいコーヒーもまた、東南アジアの森林や生物多様性、あるいは地域住民の生活にまで影響を及ぼしていることは確かなようだ。

  私たち消費者自身が、熱帯林破壊などに加担しないようにするため、木材やバナナなどの農作物と同様、各種の認証制度が設立されている。これは、生産過程などを透明にして、熱帯林破壊や地域住民からの搾取がないことを認証してマークを付与するものなどだ。フェアトレード・コーヒー、サステイナブル・コーヒーなどと呼ばれているもので、私たちは、その認証商品を購入すれば、環境や地域社会の破壊に少しは配慮できる仕組みだ。

 しかしこれらの認証コーヒーの市場はわずかで、世界のコーヒー消費量の増大に連れて熱帯林伐採も拡大している。考えてみれば、自宅でコーヒーを入れるなんて、私が子供の頃には考えられない贅沢だった。

 (写真上)伐採された原生林跡地とコーヒープランテーション(緑の低木がコーヒーの木)(スマトラ島、南ブキット・バリサン国立公園にて)
 (写真下)ロブスタ(Robusta)コーヒー(パッケージ上部(写真では右側)に豆の種別Robustaのシールが)(写真の製品は、本文とは関係ありません)

 (関連ブログ記事)
 「インドネシアの生物資源と生物多様性の保全
 「そのエビはどこから? -スマトラ島のマングローブ林から(2)
 「地球温暖化と生物多様性
 「愛知ターゲットと保護地域 -保護地域の拡大になぜ対立するのか
 「アバター  先住民社会と保護地域
 「生物資源と植民地 -COP10の背景と課題(1)
 「ゾウの楽園の背後にあるもの -国立公園 人と自然(番外編1追補)ワイ・カンバス国立公園(インドネシア)
 「国立公園 人と自然(番外編1)ワイ・カンバス国立公園(インドネシア) -ゾウと人との共存を求めて
 「インドネシアから帰国 -時間は流れる
 「南スマトラ調査


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