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原発の安全神話と遺伝子組み換え生物の安全性 [ちょっとこだわる:民俗・文化・紀行・時事など]

  このたびの東日本大震災とともに、原子力発電所の安全神話は一気に崩れ去った。フクシマの脅威は世界を駆け巡り、各国の原発政策にも大きな影響を与えている。何事にも過信は禁物だし、“絶対”というものも存在しないことを思い知らされた。
 
 実は、生物多様性条約(CBD)をめぐる議論でも、“安全性”に関して長い間対立が続いてきた。それは、「バイオテクノロジー(バイテク)」により改変された生物、すなわち「遺伝子組み換え生物(LMO)」に関する安全性“バイオセイフティ(biosafety)”だ。その背景には、遺伝資源をめぐる先進国と途上国の対立、いわゆる南北問題がある。

 s-大豆製品01133.jpgところで、なぜLMOの安全性に関して合意されるまで、こんなに時間がかかったのだろうか。現実に、遺伝子組み換え大豆などは日本にも輸入され、遺伝子組み換えのナタネの種が、日本各地で見つかっているという。生態系への影響はないのだろうか。これまでも品種改良は昔から行われてきた。しかし決定的に異なるのは、品種改良は自然の摂理に基づいていることだろう。確かに、レオポン(leopon)(雄ヒョウと雌ライオンの雑種)など、自然界では生じることのない種を人間は作り出した。しかしそれは、地理的環境などにより自然界では交雑することはほとんどないだけで、同じネコ科同士で生物学的には近縁だ。また一代雑種F1には子孫を残す能力はく、仮に自然界に放出されても生態系には影響はないようだ。もっともこれも、繁殖能力がないとも言い切れないようだから、話は複雑だが。

 一方、LMOはわけが違う。自然の摂理を離れた、いわば神の領域にまで人間が踏み込んだ結果だ。その影響は計り知れない。生態系だけでなく、人間の健康にも影響は及ぶだろうが、想定さえもつかない。しかし、国内でもこの議論の当初は、LMOは実験室や圃場など閉じられた空間で、個別の取扱要綱に基づき安全性には配慮して慎重に扱っているので、新たな法律などによる規制は必要ない、と関係当局が主張していたのを私は覚えている。その構造は、世界の南北対立の議論と同じだ。

 これって、原発の“絶対安全”の主張、「安全神話」とどこが違うのだろう。かつて、自然界に存在しない物質フロンを創造し、その利用価値から夢の物質とまで称讃されたにもかかわらず、それがオゾン層破壊の元凶となった経験を私たちは忘れてはならない。私たちの現代科学、人間の知恵とはその程度なのだ。

 このたびの原発事故では、いまだに自宅に帰ることもできない方々も多い。風評被害や節電の影響も、農業、工業を問わず、また日本のみならず世界的にも甚大な影響を及ぼしている。これを契機に、当事者の言う「安全性」をもう一度検証するとともに、安全を主張する側は皆が納得するだけの情報開示をしてもらいたいものだ。

 遺伝子組み換えでも同じことが言えるだろう。安全神話は、慎重になってもなり過ぎることはないだろう。その結果、物事の進み具合が遅くなっても、焦らずのんびり行こうではありませんか。この際だから。

 (このブログ記事は、「遺伝子組み換え生物と安全神話 名古屋・クアラルンプール補足議定書をめぐって -COP10の背景と課題(5)」の記事を再構成して、本カテゴリーに再掲したものです。生物多様性条約における遺伝子組み換えをめぐる議論の詳細(南北対立)については、上記の「COP10の背景と課題(5)」を参照ください。)

 (写真)日本の食卓に多い豆腐や納豆などダイズ製品には、「遺伝子組換えダイズは使用していません」の表示があるが・・・

 (関連ブログ記事)
 「遺伝子組み換え生物と安全神話 名古屋・クアラルンプール補足議定書をめぐって -COP10の背景と課題(5)
 「イベント自粛と被災地との連帯 -自粛の連鎖から多様性を考える
 「地震ニュースとCMの多様性 -私的テレビ時評
 「生物資源をめぐる国際攻防 -コロンブスからバイテクまで
 「MOP5って何? -遺伝子組み換えをめぐって
 「インドネシアの生物資源と生物多様性の保全
 「生物資源と植民地 -COP10の背景と課題(1)
 「ABS論争も先送り 対立と妥協の生物多様性条約成立 -COP10の背景と課題(2)
 「名古屋議定書採択で閉幕 COPの成果 -COP10の背景と課題(3)
 「愛知ターゲット 保護地域でなぜ対立するのか -COP10の背景と課題(4)
 「アクセスの多い「名古屋COP10成果」ブログ記事」 
タグ:生物多様性
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