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サファリの王国と地域社会 -国立公園 人と自然(番外編3) クルーガー国立公園(南アフリカ共和国) [   国立公園 人と自然]

 ブログ記事「アバター 先住民社会と保護地域」では、南アフリカ共和国で開催された「第5回世界国立公園会議」(2003年)やその際に訪れた世界遺産「グレーター・セント・ルシア湿地公園」を紹介した。その南アフリカ共和国は、本年2010年には、サッカー・ワールドカップが開催されることでも知られている。そこで、今回の「国立公園 人と自然」では、番外編3として、南アフリカ共和国で最も古い国立公園「クルーガー国立公園」を取り上げることにする。

 クルーガー(Kruger)国立公園は、南アフリカ最初の国立公園で、モザンビークとの国境に沿って南北350kmに及ぶ広大な地域には、ゾウ、ライオン、サイ、バッファロー、ヒョウのいわゆるビッグ・ファイブをはじめ、シマウマ、キリン、チータ、インパラ、イボイノシシなど147種に上る哺乳類と507種の鳥類などの野生動物が生息している。クルーガーは、1898年に小規模な野生動物保護区として指定されたのが始まりで、正式に「国立公園」としての名称で国立公園局によって管理されるようになったのは1926年からである。s-クルーガー国立公園ゲートCIMG0290.jpg

 指定当時(1898年)は、ヨーロッパの植民地としての人種差別政策(アパルトヘイト)と、狭義の保護政策である米国型(いわゆる営造物型のこと:「『米国型国立公園』の誕生秘話」を参照)の保護地域として、先住の地域住民(黒人)は区域から追放され、植民地支配の白人がサファリ(狩猟・探検旅行)を楽しむ場所でもあった。唯一公園内に留まることが許された黒人は、低賃金のサファリ関連労働者のみだった。最近では、地域住民の利益と持続可能な資源利用を組み入れた保全についての新たな考え方により、先住民の地域社会と連携をとることに力点が置かれるようになってきた。土地も先住民社会に返還されるようになってきた。土地の返還に関しての極端な例であり、南アフリカで最も有名な例の一つとしては、公園北端のパフリ (Pafuri) 地域が挙げられる。マクレケ(Makuleke)部落の住民たち約3000人は、1969年に家を焼き払われ、銃によって強制的にそれまで住んでいた地域から追放された。その後、復帰主張が認められ、2万5000ヘクタールの土地が返還され、その土地は公園区域に編入された。返還協定では、農業や定住などは公園当局の許可なしにはできないことになっていて、保護と土地利用の両立が地域住民の責務ともなっている。

 この背景には、農業や牧畜による収入よりもエコツーリズムによる収入のほうが多く、保全との両立に適しているとの認識があるようだ。観光客は、公園のゲートで入園料を支払って、ツアーバス、あるいは自家用車などで野生動物を観察する(ゲームドライブ)。前述のビッグ・ファイブと呼ばれる大型野生動物を見ることができれば最高だ。ゾウといっても、インドネシアのワイ・カンバス国立公園のように、飼育されたりはしていない。野生のアフリカゾウは、アジアゾウ(インドゾウ)よりも大型で、食事のためには大木を根からへし曲げるほどだ。テレビ画面や動物園では味わえないような迫力のある野生動物の姿には、車上からみるだけでも興奮する(今回のブログでは、通常2葉の写真掲載だが、奮発して動物写真を5葉掲載した)。夜のツアーは危険だが、レンジャーが案内するプログラムもある。ライトに照らされて目を光らせる樹上のヒョウ、川に群がるワニなど、スリル満点だ。こうした感動を求めて、先進国から多くの観光客が訪れる。その観光客の宿泊施設(キャンプ)は、外観は先住民部落風でも、ベッドのほか、シャワー、キッチンなども完備した立派なロッジだ。レストランや土産品店も備えている。エコツーリズムは、これら宿泊地でのベッドメーキング、料理賄い、そしてガイドや運転手、土産物の生産・販売など、地域社会に雇用の機会と多額の現金収入をもたらしている。

s-シマウマ0348m.jpgs-野生ゾウ群れ0352m.jpgs-キリン0384m.jpgs-インパラ0364m.jpgs-イボイノシシ0373m.jpg

  
 このように、かつての「サファリ」から「エコツーリズム」と名を変えた観光の恩恵に与る人々も多い。しかし一方で、人種差別政策が終わった現在でも、一般的な地域住民には公園利用が制限されているのが実情だ。その原因は、公園利用に必要な入園料支払いができない、あるいは猛獣除けのための自動車を所有できないといった経済的な理由からだ。これらの地域社会の住民たちは、公園当局のことを土地や野生生物、薬草など生物資源の強奪者とみなしている。

 (写真上)公園ゲート(クルーガー国立公園(南アフリカ)にて)
 (写真下:左上から順に)シマウマ、ゾウ、キリン、インパラ、イボイノシシ(いずれも、クルーガー国立公園(南アフリカ)にて)

 (関連ブログ記事)「アバター 先住民社会と保護地域」、「宮崎アニメ「もののけ姫」 人と自然」、「『米国型国立公園』の誕生秘話」、「エコツーリズムの誕生と国際開発援助」、「国立公園 人と自然(番外編1) ワイ・カンバス国立公園(インドネシア) -ゾウと人との共存を求めて


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