So-net無料ブログ作成
検索選択

悠久の時そして林住期 -余暇と巨樹とを考える [巨樹・巨木]

 私の専門は、自然環境政策、なかでも最近では、生物多様性に関する国際環境政策の変遷や自然保護地域の管理と地域社会との関係などを研究している。また、保護地域管理にも関連するが、人々の自然の中での長時間滞在もテーマで、今年の夏にも箱根の芦ノ湖キャンプ村でアンケート調査を実施した。この長時間滞在にも関連する日本余暇学会では、研究論文誌の編集委員会委員長をしている。さらに、ブログ「日本一の巨樹の町で全国巨樹・巨木林の会会長に就任」 などでもお知らせしたとおり、20年以上にわたって「巨樹」にも関わってきた。今回のブログのテーマは、この「余暇」と「巨樹」についてだ。

 s-板根.jpg環境省が1988年(昭和63年)に実施した「巨樹・巨木林調査」によれば、幹周3メートル以上の樹木は、全国で6万本以上にのぼる。全国で一番幹周りが太いのは、先日巨木フォーラムが開催された鹿児島県蒲生町の「蒲生の大クス」(幹周24.22m)だ。わが国の巨樹には、このクス(楠)の種類が全国的に多いが、その他、屋久島の縄文杉や神社などに多いスギ、さらにはケヤキやイチョウなど様々な樹種がある。これらは、信仰の対象になったり、「峠の一本杉」のように地域のシンボルとなったり、いろいろな故事・伝承や禁忌(タブー)を有したり、あるいは独特の呼び名で親しまれていたりする。人を寄せ付けないような山奥にひっそりと残ってきた巨樹ももちろん多いだろうが、逆に人との関わりの中で生き残り、巨樹になったものも少なくない。

 巨樹を近くから仰ぎ見た時に、その覆いかぶさるような大きさに圧倒され、時に畏敬の念を抱いた経験を持った人も多いだろう。全国には巨樹に愛着を持ち、巨樹巡りをしている人も多い。中には、日本だけでは飽き足らず、海外の巨樹までも探訪している人もいる。こうした巨樹に関心を持つ人々が集い、「全国巨樹・巨木林の会」(ホームページhttp://www.kyojyu.com/)を設立して、毎年「巨木を語ろう全国フォーラム」を開催している。全国各地では、巨樹による「まちおこし」も盛んだ。

 このような巨樹の魅力はなんだろうか。大きさ、太さ、独特の異形・・・人により、巨樹により、その応えは様々だろう。しかし、誰もが認めるのが、人間を超越したその樹齢だろう。幹周りが太くなれない樹種でも、永年の風雪に耐えてきたその姿には、息を呑む力強さを感じる。それが畏敬の念ともなり、人々を惹きつける元となるような気がする。つまり、その魅力の根源は「悠久の時」なのだ。

 s-ヨセミテ国立公園セコイア.jpg翻って、「余暇」はどうだろうか。そこにもやはり、時間観念がある。余暇のほうは、巨樹の時間観念に比べれば、はるかに短い、まさに「寸暇」と呼ばざるを得ないほどのものかもしれない。私の持論では、「究極の余暇は何もしないこと」だ。何もしないといっても、なかなか難しいが、例えば自然の中でボーっとすることは、ある意味では、得がたい余暇の過ごし方だろう。わたしたち日本人、特に現代社会では、これはなかなか難しい。まさに究極の余暇になりつつある。そんな思いで、「自然の中での長時間滞在」をテーマとした研究を行っている。

 釈迦は菩提樹の下で悟りを開いたと伝えられている。インドの古代思想では、人生には四つの段階があるという。いろいろと学ぶ「学生期(がくしょうき)」、結婚、仕事などの「家住期(かじゅうき)」、日常生活から離れて好きなことや瞑想をする「林住期(りんじゅうき)」、そして悟りを開く「遊行期(ゆぎょうき)」だ。まさに、巨樹の下や自然の中で思いを巡らす余暇の形態は、この林住期そのものではないだろうか。全国巨樹・巨木林の会に集う人々も、写真や絵画、文学などの芸術や自然科学の研究、観光、地域振興など、いろいろな思いで、巨樹の下に行き、巨樹を見つめ、巨樹の肌に触れている。このブログをご覧いただいた皆さんにも、「悠久の時」を経てきた巨樹の下で、「余暇」について是非思いを巡らし、語り合っていただきたい。少なくとも、巨樹を訪れることが、すばらしい余暇体験になることは間違いないだろう。

 (写真上) 熱帯の巨樹の板根(インドネシア・ボゴール植物園にて)
 (写真下) セコイアの巨樹(米国・ヨセミテ国立公園にて)

 (関連ブログ記事)「日本一の巨樹の町で全国巨樹・巨木林の会会長に就任」 「全国巨樹・巨木林の会と巨樹調査再考」 「自然の営みから学ぶ -人と自然の関係を見つめなおして」 「自然と癒し -日本人は自然の中でのんびり過ごせるか」  「繋がる時空、隔絶した時空 -携帯電話・インターネット考」 「インドネシアから帰国 -時は流れる」 「プロフィール

 *この記事は、筆者の「悠久の時 -巨樹から余暇を考える」(日本余暇学会ニュース61号,2008.1)に加筆修正しました。
nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 1

コメント 2

mimimomo

大きな木には憧れがありますね^^
そんな所でノンビリできたらいいです。
by mimimomo (2015-04-06 11:32) 

staka

mimimomoさん
巨樹の下では、なんとなく癒されますね。
お釈迦様が菩提樹の下で瞑想したのもわかるような気分になります。
by staka (2015-04-06 12:15) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。