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繋がる時空、隔絶した時空 -携帯電話・インターネット考 [ちょっとこだわる:民俗・文化・紀行・時事など]

 この数カ月、国内外の出張が続きました。その間、インターネット、というよりも電子メールが欠かせませんでした。各種会議の日程調整など、次々とメールが飛び込み、返信しました。締め切りを抱えた原稿も旅先から送付しました。初めからメールで仕事をこなすことを前提にして、出張の日程を組んだものですから仕方ありません。世界中の時間と空間が、ネットで繋がっているのを実感しました。

 今や途上国といえども、ちょっとしたホテルなどではインターネット接続ができます。今回ほどその恩恵に与ったことはありませんでした。逆に、ネットがつながらない時には、お手上げでした。インドネシアのスマトラでは、最初はロスメンという安宿に泊まりました。シャワーもなく、貯めた水をかぶってのマンディ(行水)、トイレにももちろん紙はありません。それには耐えられたのですが、結局ネットが使える高級ホテルに移ってしまいました。

 私はもともとは、携帯電話や電子メールで仕事などに縛られるのは嫌いです。高齢の親を抱えてから、緊急連絡用に携帯を持つことにしましたが、電話番号は家族のほかにはごくわずかの人にしか教えていません。電話がかかってきても、鞄に入れたままで気がつかないこともしょっちゅうです。そもそも電話がかかってくることを想定していないのです。

 そんな私の生活でしたが、今年ほど海外にいても日本と繋がっていることを実感し、電子メールの威力を感じたことはありませんでした。香港やソウルの乗り継ぎの際にも、暇つぶしを兼ねてメールチェックをしてしまいました。空港では無料で無線接続(Wi-Fi)ができ、大変便利でした。

 このように今や多くのアジアの空港でも無料の無線LANを利用できます。それに引き換え、先進国といわれる成田やパリの空港では無線接続はできても、さらにプロバイダーと接続しないとその先には進めません。つまり有料接続なのです。こんなことでは、やはり成田空港はハブ空港(地域の拠点空港)争いに負けそうです。s-キャンピングカー0164.jpg

 そう言えば、1995年にインドネシアに赴任(このブログの「プロフィール」、あるいは「生物多様性プロジェクト」を参照)した当時、ジャカルタではビジネスマンが歩きながら携帯電話で話していました。当時の日本では、まだポケベルが主流だったので驚きました。なにしろ、技術移転や無償の建物を提供するために”先進国”から”途上国”にやって来た人間だったのですから。

 後になって、その理由がわかりました。日本では明治維新の直後(明治2年)に横浜で電信が開通し、明治10年には電話通話実験が成功したのを皮切りに、全国に電柱が施設されました。それに対して、インドネシアでは、ずっと後になって電話網を整備し始めたのです。それでも国土が広大で、島も多い国柄、国の隅々にまで電話網を張り巡らせることなどとてもできません。そこに登場したのが無線を使用した携帯電話だったのです。有線で全国に電話網を整備するよりも、ずっと早く、安くできるのです。携帯が普及するはずです。テレビも当時から通信衛星からパラボラアンテナでの受信でした。

 このように、日本などでは徐々にグレードアップしていったものが、途上国ではずっと後になっていきなり三段跳び(カエル跳び)のように最先端のものが導入されることがよくあります。

 熱帯地域の途上国を研究フィールドにしている世界の研究者を対象に、研究ステーションの設備などについてアンケートをしたことがあります。社会からは隔絶されたような生活を送っているかに見える(失礼!)フィールド研究者たちでさえも、必要な設備の一番に挙げたのが電話やインターネット設備でした。やはり研究者の世界も、日常の時空からは切り離しができないのでしょう。

 s-展望台(ウェザーステーション).jpg東京から船で25時間、数年前にやっと携帯電話が通じるようになった小笠原の開発について、こんなことを考えたこともありました。地元の人は携帯電話が使えても、観光客は使えないようにできないか。日本にも携帯電話の通じない観光リゾート地があってもよいのではないか。仕事など日常の時空から隔絶された場所の存在こそ現代では貴重ではないのか。むしろその「不便さ」を売り物にできないか。それこそ究極の癒しの場になるのではないだろうか...所詮、島外者の戯言かも知れませんが。

 「自然の中で何もしないでのんびり過ごす」ことを研究テーマの一つ(本ブログの「自然と癒し」参照)にしている私です。しかし、今の私にとって、日常と切り離された時空に向っては、当分羽ばたけそうにもありません。残念ですが、人並みになったということなのでしょう。このブログの読者の皆さんは、繋がる時空、隔絶する時空、どちらが好みでしょうか。

 (写真上) 隔絶した時空でのキャンピングカーとテーブルを囲んでの団らん風景(ロッキー山脈のヨーホー国立公園(カナダ)にて) 
 (写真下) いつ現れるかしれない沖合のクジラを待つ観光客(小笠原・父島ウェザーステーション展望台にて)

 (関連ブログ記事) 「プロフィール」 「生物多様性プロジェクト」 「インドネシアから帰国 -時間は流れる」 「自然と癒し」  「バルト海の小島でワークショップ」 「モンゴルの風に吹かれて」 「南スマトラ調査
 (関連論文)
     「生物多様性研究のための野外研究ステーションに対する研究者ニーズ」(環境情報科学論文集19、2005年) 
     「自然の中での長時間滞留-箱根のケーススタディから」(余暇学研究第7号、2004年)
     「キャンプ場利用と自然の中での長時間滞在 -箱根・芦ノ湖キャンプ村の事例」(余暇学研究第9号、2006年)
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