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やんばる国立公園指定 ― 世界遺産への期待と多難な課題 [保護地域 -国立公園・世界遺産]

2016年9月15日、日本で33番目の国立公園「やんばる国立公園」が指定された。

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奥深いやんばるの森(1999年11月撮影、以下同じ)

沖縄本島北部の国頭、大宜味、東の3村にまたがる陸域面積13,622ha、海域面積3,670haの国立公園で、新規指定の国立公園としては2014年3月に指定された「慶良間諸島国立公園」以来だ。(2015年3月指定の「妙高戸隠連山国立公園」は、「上信越高原国立公園」からの分離)

指定日の9月15日は、33年前に固有種のヤンバルテナガコガネが発見された日だという。

沖縄本島北部のやんばる(山原)の森は、国内最大級の亜熱帯照葉樹林で、ヤンバルテナガコガネのほか、ヤンバルクイナ、ノグチゲラ、オキナワイシカワガエルをはじめとする絶滅のおそれもある希少な固有種が生息している。

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やんばるの森の照葉樹林

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やんばるの渓流
イシカワガエルなどが生息していそう?

環境省では、これら希少種の保護活動や普及啓発を行う拠点として「やんばる野生動物保護センター」を平成11年(1999年)に設置したが、平成22年(2010年)には展示棟を全面改修して「ウフギー自然館」としてリニューアルオープンした。
ちなみに、ウフギーとは地元の方言で大木を意味するという。

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やんばる野生動物保護センター
1999年のオープン半年後(画像一部修正)

先に指定された「慶良間諸島国立公園」や本年に大規模区域拡張された「西表石垣国立公園」などと合わせて、政府では「奄美・琉球諸島」地域の世界自然遺産としての登録を目指している。

しかし、世界遺産登録までには多くの課題も残されている。

独自の進化を遂げた固有種を含む独特の生態系として世界遺産に登録された先輩格の小笠原諸島でも、外来種による固有種への影響が登録まで、そして登録後も課題だった。

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小笠原父島の海岸景観(2003年6月撮影)

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小笠原の固有植物の一種ムニンツツジ
父島時雨山にて(2002年3月撮影)


やんばるでも、ノネコを含む外来種による固有種の捕食などが大きな脅威となっている。

外来種だけではない。交通事故による小動物の衝突死、貴重昆虫やランなどの採集・盗掘などもある。

また、水資源開発や都市化、観光開発などによる影響も、やんばるの森にも迫ってくるに違いない。

そして、この国立公園の大きな課題として、「米軍北部訓練場」の返還などがある。

国頭村と東村にまたがる森林地域の約7,800haは、米軍の演習場として利用されているが、今回の国立公園指定地域には含まれていない。

その一部が今後返還される予定であり、返還後に国立公園編入も含めて検討されることになっている。

しかし現状でも、部分返還に伴うヘリパッド建設やオスプレイ運行など、沖縄本島北部地域の生物多様性への影響も懸念される材料が残っている。

国際自然保護連合(IUCN)などでは、自然保護の最大の敵の一つは戦争・紛争だとしている。
国境を超えた自然保護地域の設定により関係国の友好を促進しようとする「国際平和公園」(国境を挟んだ国立公園)も、世界で100ヵ国以上の地域に設置されている。

一方で、渡り鳥などが最も安心できる生息地の一つが、70年にわたり人間の侵入もなく、戦乱もない、朝鮮半島の非武装地帯(DMZ)だというのも、何とも皮肉だ。

そして、自然だけではなく、文化財も戦火などで破壊される例が後を絶たないのは、何とも悲しいことだ。

少しでもこれを阻止する力となりたいと思う。

【本ブログ内関連記事リンク】

祝 富士山世界文化遺産登録 -世界遺産をおさらいする

小笠原 世界遺産に登録!!

世界遺産登録 -観光への期待と懸念

世界遺産候補になった東洋のガラパゴス、ペリーやジョン万次郎も訪れた島々 -国立公園 人と自然(2) 小笠原国立公園

嵐のあとで



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源氏との因縁 鶴嶺八幡宮と大イチョウ [巨樹・巨木]

「鶴嶺八幡宮」(神奈川県茅ケ崎市)は、茅ヶ崎の総鎮守とはいえ、近隣の相模国一宮の「寒川神社」ほどには知られていない。
ましてや、超有名な鎌倉の「鶴岡八幡宮」にはとても足元にも及ばない。

しかし実は、あの鶴岡八幡宮の前身ともいえるのが、この鶴嶺八幡宮らしい。

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全国にある約8万社といわれる神社は、八幡神社(八幡宮)、稲荷神社、熊野神社など、それぞれのルーツがあり、それが各地に勧請されて広がっていった。

鶴嶺八幡宮は、源頼義が長元三年(1030)に京都の石清水八幡宮(一説には、大分県の宇佐神宮)を勧請して懐島郷矢畑に創建した「懐島八幡宮」がその元といわれている(否定的な説もあるようだけれど)。

つまり、源氏が関東に進出する際に、最初に創建した氏社が鶴嶺八幡宮だという。
以来、源氏の篤い信仰を受けてきた。

その後、頼義は前九年の役での戦勝を祈願し勝利すると、鎌倉の由比郷に懐島八幡宮を勧請して「由比若宮」を創建し、これが現在の「鶴岡八幡宮」の元となったという説もある。

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鎌倉の鶴岡八幡宮(奥)と太鼓橋(手前)(2010年3月撮影)


一方、頼義の子の八幡太郎義家が、後三年の役の戦勝祈願と勝利により、懐島八幡宮を現在地の浜之郷に遷したのが鶴嶺八幡宮という。

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安藤広重の東海道五十三次絵図の「南湖の左富士」で有名な鳥井戸橋。そこの国道1号線(東海道)には、鶴嶺神社の「大鳥居」がある。

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その大鳥居から社殿前までは、「八丁参道」「八丁松並木」と呼ばれる松の並木が続き、茅ヶ崎市指定天然記念物となっている。八丁というから、約800mもの距離になる。

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この参道は、江戸時代に三代将軍徳川家光から七石の御朱印を拝領した記念に、八幡宮別当住職の朝恵上人が社殿の再建とともに並木を整備したものという。

「二の鳥居」の手前には、太鼓橋があり、松並木はまだまだ続く。

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社殿の手前には、源義家が鶴嶺八幡宮を現在地に遷座したときに植えたと伝えられる「大イチョウ」がある。樹齢は950年だという。

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同じ鎌倉期の鶴岡八幡宮の大イチョウ(隠れ銀杏)が倒壊してしまった現在、隠れ銀杏を凌ぐ大きさの鶴嶺八幡宮の大イチョウは、神奈川県の宝ともいえる。

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隠れ銀杏の撤去作業(2010年3月撮影)


環境省の巨樹データベースによれば、幹周919㎝、樹高29mで、神奈川県天然記念物に指定されている。神奈川県内でイチョウとしては第1位、全種でも5番目の幹周を誇る巨樹だ。かながわ名木百選にも選定されている。

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境内には、源頼義が前九年の役の戦勝祈願で手植えしたという樹齢900年のマキの枯損木が御神木として保存されている。

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境内社には、淡島神社、鉾宮神社、稲荷神社がある。

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また、鶴嶺八幡宮に合祀される前の「佐塚大明神」では、暁の祭典とも呼ばれて神奈川県無形民俗文化財にもなっている「浜降祭」のルーツである南湖浜での禊が行われていたともいう。

だから、現在の浜降祭でも、鶴嶺八幡宮の神輿は、寒川神社の神輿とともに、別格扱いとなっている。

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鶴嶺神社の名前はもちろん以前から知っていたし、国道沿いの大鳥居も八丁松並木も昔から何度も通過しているけれど、神社に参拝したのは今回が初めて。

近くにこんなに源氏と因縁のある神社があるとは知らなかった!

遠くへの旅もいいけれど、もっと足元を見直さないとと反省しきり<(_ _)>


【本ブログ内関連記事リンク】

暁の祭典 浜降祭

新緑の鞍馬寺・貴船神社 義経伝説とパワースポットを追って(1)~(3)」

そこにある巨樹 ― 春日部駅近くの巨樹めぐり

雙林寺の七不思議と巨樹





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国立公園とナショナルパークの違い? ― 国立公園のブランド化による外国人観光客誘致(3) [保護地域 -国立公園・世界遺産]

またまた、国立公園のブランド化による外国人観光客誘致の話題で恐縮です。

環境省の記者発表資料(2016/7/25)によると、「日本の国立公園を世界水準の『ナショナルパーク』としてのブランド化を図る」ことで、訪日外国人の国立公園利用者数を東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに1000万人にしようという。(本ブログの記事「スーパー国立公園?発表 ― 国立公園のブランド化による外国人観光客誘致(1)」参照)

ここでいう「国立公園」と「ナショナルパーク」には、どんな違いがあるのだろうか。

もともとは、「国立公園」は「ナショナルパーク(National Park)」の訳語だから、同じはずだけど。

国家や政府機関(省庁)、国際NGOなども含む多数の会員を有する世界最大の自然保護団体、国際自然保護連合(IUCN)では、世界の保護地域をその管理目的などから6種に分類している(保護地域カテゴリー)。(本ブログの記事「日本の国立公園は自然保護地域ではない? -多様な保護地域の分類」参照)

これによれば、国立公園(National Park)は、第2番目のカテゴリーとなっており、「主として生態系保護とレクリエーションのために管理される保護地域」である。

世界で最初の国立公園である「イエローストーン国立公園」(米国1872年指定)の時代から、その目的は変わっていない。(本ブログ記事「『米国型国立公園』の誕生秘話」を参照)

世界で3番目に指定(1885年)された「ロッキー山脈国立公園」(カナダ)の中心となる現在の「バンフ国立公園」のモレーン湖は、エメラルドグリーンの水色と周囲の氷河地形により、世界遺産カナディアンロッキーの中でも最も美しいといわれ、カナダの20ドル紙幣の図柄にも採用されたほどの景観を誇る。
そこは同時に、カヌー遊びの場ともなっている。

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モレーン湖(バンフ国立公園)2003年撮影


その点では、日本の国立公園も変わりがないはずだ。
当初から外国人観光客誘致のための観光が、国立公園設置の目的となっている。(本ブログ記事「意外と遅い?国立公園の誕生 -近代保護地域制度誕生の歴史」 「歴史は繰り返す?インバウンドを狙った国立公園誕生 ― 国立公園のブランド化による外国人観光客誘致(2)」参照)

しかし、IUCNと国連環境計画(UNEP)が共同して作成した世界の保護地域のリスト(国連保護地域リスト)によると、日本の国立公園の多くは、「国立公園(ナショナルパーク)」ではなく、第5カテゴリーの「景観保護地域」に分類されているのだ。

どうやら、日本の国立公園では生態系保護よりも単に絵葉書のような美しい景色の保護が中心であり、また国立公園の土地が国有地ではなく民有地が主体で原生的な自然よりも里山的な自然が中心であること、などがその理由らしい。

なるほど、何度も本ブログ記事に登場してもらい申し訳ないが、日本で最初の国立公園の一つ「瀬戸内海国立公園」は生態系保護が目的とは言い難いと認めざるを得ない。

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備讃瀬戸の島々(小豆島寒霞渓より)


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多島海に沈む夕日(小豆島より)

今回の環境省選定の8公園は、
「世界水準のナショナルパーク」として集中的に整備などを行おうとするものだという。
ということは、
単なる美しい風景を保護する「景観保護地域」としての「日本型の国立公園」ではなく、生態系保護を重視した「ナショナルパーク」ということだろうか。

でも例えば、今年2016年5月に開催されたG7サミットの会場となった「伊勢志摩国立公園」は、伊勢神宮など日本の伝統文化を有しているものの、自然の面では「瀬戸内海国立公園」とどれほどの違いがあるのだろうか。
私は伊勢志摩国立公園への訪問回数はそれほど多くもなく、誤解もあるのかもしれないが。

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日本の象徴の一つである真珠の養殖で有名な英虞湾
(伊勢志摩国立公園)



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外国人を惹きつける国立公園内の伝統文化の一つ
世界文化遺産にも登録されている日光東照宮陽明門(日光国立公園)


「世界水準のナショナルパーク」とは、必ずしもIUCNカテゴリーのNational Parkを指すものでもないのかもしれない。

しかし、単に訪日外国人を惹きつけるナショナルパークとなれば、85年前の日本の国立公園誕生とあまり発想は変わっていない?

「世界水準のナショナルパーク」の目指すところを明確にして、単なるブランド化を超えた、エコツーリズムなどの自然を求める外国人の期待に応える公園に育ってほしいものだ。

いや、その前に、国民が国立公園、そしてその自然にふれあい、誇りとするようにならないとね。



【本ブログ内関連記事リンク】

日本の国立公園は自然保護地域ではない? -多様な保護地域の分類

『米国型国立公園』の誕生秘話

意外と遅い?国立公園の誕生 -近代保護地域制度誕生の歴史

スーパー国立公園?発表 ― 国立公園のブランド化による外国人観光客誘致(1)

歴史は繰り返す?インバウンドを狙った国立公園誕生 ― 国立公園のブランド化による外国人観光客誘致(2)

新年にふさわしい国立公園、旅の原型お伊勢参りと新婚メッカの真珠の里 -国立公園 人と自然(8) 伊勢志摩国立公園

本ブログ記事の内容に関連する詳細は、下記↓の拙著をご覧ください。

生物多様性カバー (表).JPG『生物多様性と保護地域の国際関係 対立から共生へ』出版2 ―第Ⅱ部 国立公園・自然保護地域をめぐる国際関係

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